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hyoubutterのショートショートストーリー集
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釣り fishing

また新しいカテゴリが増えました。葉賢葉でございます。どうぞ。

■釣り fishing■

 磯にほど近い場所にそのコンビニは建っている。勿論、最も多い客層は釣り客だ。
 コンビニと同じ敷地内には釣具店があり、そこは道具類だけでなく様々な食材も売られている。練り餌から生きたゴカイに至るまで、釣られる魚のための食材である。
「魚のエサって臭いんだよなー、生ゴミだもんなー」
 コンビニの店外のゴミ箱に撒き餌の空袋を捨てようとしたところで、逆の方向から来た人物と手が触れそうになった。
「あ、すいません」
「っと……ヤブ医者!?」
「!?」
 賢木をヤブ医者呼ばわりする連中は大体決まっている。賢木の才能に嫉妬した一部の口さがない者達と、賢木の所属するバベルに敵対する組織――パンドラの人間だ。
 目の前で同じように釣りゴミを捨てようとしているのはそのパンドラの若き幹部、茶色がかったクセの強い髪に青い瞳の男、藤浦葉である。
「ゲッ」
「げっ、はねーだろ、ヤブ医者」
「うるせーよ、なんでお前がここにいんだよ」
 賢木がゴミ箱にゴミを入れると、続けて葉も自分のゴミを捨てる。道具一式を背負った賢木と違い、葉の方は何も持たない、身軽な姿である。
「こんなとこ来てるなんて一つしかねーだろ、釣りだよ。ヤブ医者こそなんだよ」
「俺は帰るところだ」
「ふーん?この時間に帰るってことは釣れなかったんだ?」
「うるせーよ!」
 釣り道具一式を帰り支度して背負った賢木が店内に入ると、葉も何故か入って来る。
「何だよお前」
「コンビニでゴミだけ捨てて何も買わずに買えるわけには行かねーだろ」
「それはそうだけど」
 あやしい。何やらニマニマと笑みを浮かべながら後ろを着いてくる様がこの上なくあやしい。
 案の定、店を出ても葉はついて来た。
「お前何なんだよ。ついてくんじゃねーよ」
「俺もこっちの方向なの」
 しらっとした態度で三歩ほど後ろを歩いている。後ろが気になるが、こうなったらさっさと車に乗って逃げおおせるに限る。
 葉に指摘された通り空のクーラーボックスと釣り道具とを駐車していた大型のRV車の後部座席の足元に積み込んでいた所に、後ろからドン、と力任せに押された。
「うわっ!?」
 車の中に押し込まれるような形になってあわてて仰向けになると、葉も後部座席に入ってくる。しかも後ろ手にドアを閉めると、覆い被さってきた。
「なにすんだ、この阿呆!」
「今頃一人ってことはさー、今日は女の子誰もつかまらなかったんでしょ?」
「?」
 突然何故そんなことに言及されているのかがよく分からないが、言われている内容自体には間違いがなかったので曖昧に頷く。
「ん、まあ……」
「じゃあ慰めてやるって」
「ハァ?」
 言われた言葉のわけがわからず抵抗する手が弱まったところで、葉の手がジーンズのボタンにかかる。
「お前……っ!?」
「大丈夫、ちょっと口でするだけだから」
「大丈夫じゃねー!」
 そうこう言っている間にもジッパーは下げられ下履きに手が伸びる。
「ちょっ、さすがにそれはマズいって!」
「何がマズいの?僕わかんなーい」
 ジーンズの前を開けられ、下履きを下げられて出てきたものを、葉はあろうことかその口に含む。
 途端にぬるりとした温かさに包まれる。堪えきれない快感が腰を抜けて背筋に伸びる。
「くっ、この、馬鹿っ……」
 こうなった以上、何を言おうともはや全てが手遅れだった。
 そうして賢木は理性を色欲の悪魔に売り渡す。眼下の、時折青い目で見上げてくる小悪魔に。

 怒濤のような責めに絶えきれずに熱を放出すると、突然目の前の男のことが気になった。釣りに来たと言うわりに、葉があまりに荷物を持っていないことが気になっていたのだ。
「誰かがお前を待ってるんじゃねーの?」
 釣りゴミを持っていた以外はまるで手ぶらで、それは誰かが釣り場で釣り用具や葉の分の釣り竿を預かっていることを現しているように思えたから、葉にそう声を掛けたのだ。すると。
「いいじゃん別に、俺が誰を待たせてようと」
 ――やっぱり。
「俺は当て馬かよ」
「は?」
「そいつへの当てつけに、俺に悪戯して遊んだんだろ、お前」
 そう告げた時の葉の顔をなんて表現したらいいのかわからない。
 笑っているようで、でも泣き出しそうにも見えた。
「……?」
「……アンタがそう思ってんならいいよ、それで」
「なんのことだ?」
「だからもういいって」
 もつれ合ってぐしゃぐしゃになった服装を正すと、葉は後部座席のドアを開けて外に出る。
「おい?」
 皮肉や文句の一つくらい降ってくると思っていたのに、賢木を置き去りに葉はドアに手をかけたまま舌を出す。
「この……バカ医者!」
 そして全力を込めてドアを閉められると、すごい音だけが耳の奥に残される。
「……なんなんだ」
 真実はどうだったのだろう。すたすたと去る背中をドア越しに見つめながら一人車内に残されて、賢木は呆然とするばかりだった。

                                              <終>

-----
キーワード:201. 生ゴミ 50. 魚 235. しょくざい  

 このキーワードでどんな話ができるのか自分でも不安でしたが、葉賢葉でした。腹黒コンビでお送りしました。
 

拍手コメント感謝であります!

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Comment

お返事

  • 横山(仮名)@管理人
  • 2010-09-24 23:39
  • edit
>ぱてぃ様
はい、葉賢葉でございます。本誌の展開もそうだけどぱてぃさんの影響もあると思うの(笑)待たせてたのは多分カガリでしょうね(酷)会ったのは偶然でしょうがさて・・・?
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