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hyoubutter short story

hyoubutterのショートショートストーリー集
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箱庭 garden

葉真木葉風味の真木兵部で。

■箱庭 garden■

 窓の外は海原、という生活を続けていたせいか、縁側から庭が見えるというのはなんだか物珍しくてつい見入ってしまう。
「どしたの真木さん、窓際で茶なんか飲んで、じじむさい」
「じじむさい、はないだろう、葉」
 座椅子に座ったまま身体を捻って言い返すが、旅館の茶のみから手は離さないし、座椅子から立ち上がる気もない。服はもちろん浴衣に着換えてある。
「じじむさいと言うなら俺より少佐だろうが」
 近頃寒いという話をしたら、パンドラで温泉に行こうと旅館ごと借り切ってしまったのは兵部だった。しかも兵部は非常にノリノリだった。今頃桃太郎とともに貸し切り状態の大浴場で遊んで……湯治の最中だろう。
「あ、そういうこと言ってると少佐にチクっちゃうよ?」
「……すまなかった」
 素直に謝る。夕方の庭は趣深く、茶もすすもうというものを、つまらない心配事をしたくはない。
「真木さんはほんとに臆病だなぁ、少佐のこととなると」
「臆、病?」
 確かに我ながら気を遣いすぎかと思うこともある。気を揉んだ末になんともなかった、なんてことはざらだ。
 などと兵部のことを考えていると、今まで浴衣に着替えていた葉が真木ににじり寄ってくる。
「どうした」
「変な噂になるのとか、恐い?」
「なんのことだ」
「気付いてないならいいんだけどー」
「なにを言っているのかさっぱりだな」
「へー」
 にじり寄った先にあるテーブルから茶菓子をつまむと一つ己の口に放って、にやりと笑ってみせる。
「つよがってるだけじゃなくて?」
「?」
 葉はぺろりと舌を出して茶菓子を持っていた指を舐める。真木には葉の発言の意図が掴めない。
「少佐とのこと。――今日だって、少佐と相部屋のつもりだったんでしょ?」
「!それは……少佐が部屋割りを決めたのだから、俺が口を出す筋合いではない」
 平然と言おうとしたが、我ながら憮然とした口調になっていて心の中で失笑する。そうなのだ。ことが兵部のことになると、自分はすぐにいっぱいいっぱいになってしまう。近頃そういった事が続いているのを見透かされたかのようなタイミングで部屋を別にされて、いやきっと見透かされているのだろうと思い直す。
「……俺はそんなにわかりやすいか?」
「とーってもね?」
 どうやら葉にも見透かされているということか。溜息をつきたい気分で茶飲みをテーブルに置くと、葉が更ににじり寄って真木に近づいてきた。
「何だ?」
「慰めてあげようか?」
「なっ!?」
「俺けっこう平気だよ?噂とか恐くないし――」
 葉が真木の浴衣に手を伸ばそうとしたその時。
「失礼するよ」
 言葉と同時に二人の間に影が立ちふさがった。
「少佐っ?」
「ちぇっ、ジジイか」
「ジジイとはなにごとかな、葉」
 テレポートで現れた兵部は二人と同じ浴衣姿で、髪の毛の先から少しだけ滴が垂れていていかにも湯上がりといった感じだ。ジジイ呼ばわりされたのに目をむいて、腰を屈めると葉の額にデコピンする。
「いてっ!」
 葉がことさら大げさに後ろに飛び退ると、ふん、と満足したのかふんぞりがえる。肩の桃太郎もわかっているのかいないのか兵部と同じポーズを取っている。
「葉、子ども達が着いたから風呂に入れてあげて。真木は僕と一緒」
「え、でも……」
 部屋割りが違う、と言おうとした真木に兵部は先読みして手をひらひらと振ってみせる。
「気が変わった。かわりに桃太郎をこっちの部屋に置いていくから」
「あージジイ、きたねえ!」
「きたなくないもーん。それに……」
 ふいに兵部が座椅子から腰を浮かせた真木の腕を引っ張り上げる。
「あげないよ」
「それはどうも」
 兵部がにっこり笑うと、葉もにんまりと笑って、そして次に二人揃って真木を見る。
「??」
 唯一状況のわかっていない真木が目を丸くしていると、葉がはぁ、とこれ見よがしに溜息をついた。
「駄目。気付いてないみたい」
「じゃ、僕の勝ちだね?」
 銀の髪を揺らして葉に微笑みかけながら、桃太郎を葉に押しつける。
「そんなわけで、仲良くするんだよ、葉、桃太郎」
『ヒマワリノ種次第ダナ』
「齧歯類と添い寝かよー。まぁいいけど」
 ぶつくさとこぼしながら立ち上がった葉はあっさりと二人に背を向けて、桃太郎とともに部屋を出て行く。
「じゃ、僕らも移動しようか」
「は――」
 はい、という一言を言い切らないうちにテレポートで兵部に連れて行かれる真木。
 後に残った湯飲みから、まだわずかに湯気が立ち、夕闇に沈みゆく庭がそれを見つめていた。

                                    <終>

-----
お題:「夕方の庭」で登場人物が「つよがる」、「噂」という単語を使ったお話を考えて下さい。

最近葉ちゃん無双。CPごとに別人とわかっていても書いてる側としてはトータルで葉ちゃんがあちこちに手を出してるのに違いはないわけで時折混乱してしまうのでどうしたもんやら。罪作りな男です。

そんな葉ちゃんでも構わない人はぽちっとな。

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Comment

お返事

  • 横山(仮名)@管理人
  • 2011-01-31 22:21
  • edit
>ぱてぃ様
 真木さんもっとモテてもいいと思うんです。でもきっと自覚はないでしょうけど!(笑)葉ちゃん無双大丈夫っすか?葉ちゃん派の人にそう言ってもらえると勇気がもりもりと・・・!
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