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hyoubutter short story

hyoubutterのショートショートストーリー集
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二日酔い next day

三幹部と少佐でラーメン。


■二日酔い next day■

 豚骨か鶏ガラか、は趣味の別れるところだ。今日のラーメンは下ごしらえの時間がなかったのでせめてクリスマスパーティで余った鳥ガラを使ったものにしてみた。
 とはいえ、船に残っているのは数名だ。他の者は連日のパーティの馬鹿騒ぎの後だというのに元気に街に出ていった。残ったのは二日酔いに悩む大人数名で、その数名から昼はラーメンがいいとリクエストがあった。
「どうしてあいつらは、二日酔いの日はラーメンを食べたがるんだろうな」
 溜息まじりにどんぶりの三つ載ったトレイを運びながら、皆が集まったこたつのあるゲーム部屋へと移動する。部屋の扉は軽く開いていて、真木は扉を開けて中へと入ろうとしたのだが――
「真木ちゃんストップ!」
 紅葉の鋭い声に気圧されて真木はその場で立ちすくむ。
 部屋の中では紅葉と葉が畳の上に這い蹲っていた。
「なっ……?」
「動かないでくれよ、真木さん」
 葉が真木をなおもその場に縫い止める発言をするので、ラーメンのどんぶりを抱えた真木が途方に暮れて葉に問い返す。
「何があったんだ?」
「カラーコンタクト落としちゃったのよ。動いちゃだめよ、真木ちゃん。踏んだらアウトだからね」
「ったく、変装する訳でもねーのに、いちいちそんなものつけて」
「うるさいわね。気分ってものがあるのよ」
 がなりあいながらも二人は慎重に畳の上をあらためていく。
「そういうことか……」
 紅葉がこたつ布団を引っ張ろうとした時に、真木の後ろから声が響いた。
「二人ともそっちじゃない。探すならテレビの手前、PS3のコントローラーのところ」
 それは聞き慣れた声――兵部だった。
「少佐!」
 葉と真木が同時に声の主を呼ぶ。紅葉はすぐさま兵部に言われたとおりの場所に這っていった。
「えっと、PS3のコントローラー……」
 サイコメトリしたのだろう兵部は見つかることを確信しているらしく、興味の対象を真木の手に持ったトレイの上に移した。
「なんだよ、ラーメン?美味そうじゃないか」
「紅葉と葉のリクエストです」
「あった!あったわ!よかった……ちょっと洗面所に行ってくる!」
 コンタクトレンズを見つけた紅葉が飛び上がるように喜んで、両手でレンズをかばうようにしながらぱたぱたと洗面所へと向かう。
「何であんなとこにあったわけ?紅葉はこたつをはさんで向こう側にいたのに」
「まばたきの時に飛んでしまったんだろうね」
 呆れたような不思議なような声で葉が疑問を口にすると、兵部がそれに解説を加える。
「いずれにせよ、見つかってよかったな」
 すぐにこたつに入った葉に倣って兵部もこたつに入り込む。昨日の交わりの直後で今日はもう夕方まで起きて来ないかと思っていたが、大丈夫だったらしいと真木は心の中で胸を撫で下ろす。そしてトレイからこたつの天板の上へとラーメンを置いていった。そのうちの一つは兵部の前だ。
「ん?僕の分?」
「俺の分ですが、もう一度自分の分だけ作りなおしにいきますので、先に食べててください」
「そう?じゃ、遠慮なく」
「いただきまーす!」
 二人の会話に被せるように葉が宣言すると、ラーメンをすすり始める。
「ラーメンといえばさー、紅葉が初めてラーメン作った時の、覚えてる?」
「忘れるものか」
 葉と真木の視線が交差して笑いが生まれる。
「なに、どうなったの?」
 シナチクを箸で挟みながら兵部が聞いてきた。
「それがさー、即席めんしか作ったことなかったから、お湯代えなかったんだよね」
「麺の打ち粉がそのまま入ってしまってドロドロになったな」
 三人で笑い合ったところに、唐突に葉の後ろに紅葉が立ちはだかった。
「……悪口の匂いがするわ」
「ちょっ、紅葉、なんで俺の後ろにテレポートして来るの!?」
「アンタが一番言ってそうだったからよ!まぁ当たりだったみたいだけど」
 ぐりぐりと葉の頭をグーで挟み始めた紅葉に、葉が悲鳴をあげた。
「痛い、紅葉ねーさん勘弁っ!」
「お前の分もできてるぞ、伸びるまえに食え、紅葉」
「あら、ありがとう」
 言われるや否やパッと手を離して紅葉はこたつに入って顔の前で手を打った。葉は真木に感謝のウインクを送っている。
「いっただっきまーす!あれ?真木ちゃんの分は?っていうか少佐おはよう」
「おはよう、紅葉」
「俺はこれから自分の分を作りにいく」
「あらそう」
 それっきりずるずると麺をすすりだした三人を後ろに見ながら真木は再度キッチンへと戻る。
「……で、いつの話をしてたの?」
「君がはじめてラーメンを作った時の話だよ」
「ケッサクだったな~、って真木さんが言ってました」
 楽しそうな声はなおも続いている。背中に当たるささやかな喧噪に押されながら、自分自身もまた一刻も早くそれに交ざるために、真木は手早くラーメンを作りはじめた。
                                   <終> 

-----

お題:「昼のこたつ」で登場人物が「探す」、「ラーメン」という単語を使ったお話を考えて下さい。

 ラーメンと三幹部は相性いいですね。というか、ラーメンって好みが別れるのと一度に作れる量が限られるのとで多人数の話に向いてないというか。今回のラーメンは支那そばみたいなあっさり醤油をイメージしてますが、皆様のお好みでみそバターコーンにでも何にでも変換して下さいませ。

読み終えたらぽちっと。

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Comment

お返事

  • 横山(仮名)@管理人
  • 2011-01-03 00:48
  • edit
>ぱてぃ様
 こかんぶの過去は色々大変なところもあったろうけど、同時にそこがかわいくてしかたがないです。うわっちゃーな思い出がまだまだ沢山あるといいですよね!
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