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hyoubutter short story

hyoubutterのショートショートストーリー集
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焼き芋 roast sweet potato

中学生日記、火の用心。


■焼き芋■

 クラスの男性陣はグラウンドの落ち葉掃除を命じられていた。
「集めた落ち葉で焼き芋しようぜ」
 と言い出したのは誰だったか。少なくとも自分ではないことをカガリは知っていたし、ちょうどクラスの外側の窓にもたれて校舎の内側を掃除している女子を横目で見ながらカガリの隣で呆れた顔をしている東野もおそらく違うだろう。
「お前等度胸あるな、一年生のうちからそんな大それたことするつもりかよ」
「だってせっかくの落ち葉勿体ねーじゃん」
 東野の言葉にも耳を貸す気配はない。
「芋は俺等が持ってくるからさ」
「明日なんてどうよ?今日集めた枯れ葉を目立たない場所に置いておいてさ」
「いいねー」
 クラスの中でリーダー格の集団がわいわいと騒いでいる。特にその集団と仲がいいでも悪いでもない東野に、同様にあまり接点のないカガリが問う。
「東野、どう思うよ」
「どうもこうも、火を使うんだろ、明らかにアウトじゃん」
「だよなー……湿気を吸った落ち葉って他に燃料がないとそう燃えるものじゃねーし、焼き芋が焼けるまで燃焼させちまうと最悪手がつけられなくなるんだよな」
「そういやお前、パイロキネシスだっけ」
「ま、な」
 東野とは自分の超能力を放す程度にはうち解けている。二人ともが焼き芋には反対らしかった。
「何を言う、東野、火野!お前等が日頃から協力的なら、こんなことで青春を謳歌しようなんて思わなかったんだぞ!」
「そうだ、不公平だ!」
「えっ?」
「俺?達?が、不公平って?」
 突然会話をふられて二人は慌てる。
「お前ら二人とも、8B全員と仲良しだろ!なのに俺達は相手にもさせてもらってない!」
 8Bとはクラスの女子のうち特に目立つ8人を意味する。BはビューティーのBだ。
「おいおい、明石あたりならすぐうち解けてくれるって」
「もう告る前から振られるようなもんだよ」
「だからな、おこぼれでもくれたっていいだろー」
「無茶言うなよ、自由恋愛しとけ、援助交際はよくないぞ」
「東~野~」
「火野おおぉ~」
 一同の矛先が自分たち二人に向かってきて、二人は閉口する。そこに。
「東野くん、掃除終わったの?」
「カガリも、なにしてるの?雑談?」
 8Bのうちの二人――ちさととカズラがそれぞれ東野とカガリに窓を開けて話しかけてきた。
「ん、ああ、終わったよ、花井さん、玉置さん」
 さっきまで東野とカガリの両方を襲いかねない雰囲気だったのが、一気に矛先が変わる。
「……東野、お前の意見は」
「阻止するっきゃねーだろ」
「だよな」
 二人、目を合わせてため息をつく。
「俺たちって」
「クラス思いだなぁ――……」

 そして翌日。
 焼き芋をたくらんで芋を校庭に持って行った連中が見たのは、すっかり綺麗に片づけられて木の葉一枚落ちていないグラウンドの風景で。
 そんな風景を前夜のうちに作ったのが東野とカガリ、それにくだんの「8B」によるものだとは、少年達は気付かなかったのである。

                                        <終>

-----
お題:「昼のグラウンド」で登場人物が「振られる」、「焼き芋」という単語を使ったお話を考えて下さい。

 中学生日記になりました。
 

よろしければ感想などいただけると小躍りして喜びます。

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