■星空の道 long road■
待ち合わせは夕方、毎日通学に使う駅にしただけあって、カガリも東野も約束の時間どおりに落ち合うことができた。
が、東野は何故か自転車で、しかもカゴに大きな包みを抱えてやってきた。
「なにそれ」
駅前のベンチでカガリが指さすと、東野はごそごそと包みを開いて中身を見せる。
「天体望遠鏡……!?スゲーじゃん」
「おじさんがこういうの好きでさ、無理言って借りてきた。ちゃんと使い方も聞いてきたから万事OKだぜ」
「やるなあ、東野」
カガリが素直に感心してそう呟くと、東野がジト目になる。
「お前は失敗したらしいな」
本来、ここには澪とカズラ、それにパティも一緒に来る予定だったが、今はカガリ一人である。
「あはは……いや、約束を破るつもりはなかったんだけどさ、俺以外は真木さ――ちょっとお目付役みたいな人に見つかっちゃって」
「すげーな、大使の家ってそんな人までいるの?」
「いるんだよ……正しいからこそ怖いっていうかさー……俺も戻ったらこってり絞られるだろうなー」
ハァ、とカガリがため息をつくと、何故か東野もため息をついた。
「なんだよ、お前まで」
「お目付役はいないけどさ、実は俺も天体望遠鏡借りるとこ、親に見つかっちゃって。あわてて逃げてきたんだけど、夜遊びだって多分バレてる、いや絶対バレてる、俺も怒られる~!」
イヤイヤと首を振ると、カガリが思わず吹き出す。つまりは二人とも、不良息子な訳だ。
「でも約束したからな」
「ああ」
文化祭が終わったら学校に忍び込んで屋上から星を見る。二人で文化祭前に約束したことだった。
「行くか」
東野が自転車を押して歩き出すと、カガリもそれにあわせて横を歩く。
狭い路地裏を縫うようにして二人で歩く。
どんなに狭く夕闇の中薄暗いとしても、この道は中学校に続く道。そしてどこにでも行ける道。二人が行きたいと思った場所と繋がる遙かな道。
「ところで本当なんだろうな?1階から校舎に入り込める窓があるって」
「間違いねーよ、こないだカズラの忘れ物取りに行った時使ったし。――そういえばその時、カズラがさ……」
長い影を路地裏に残して二人は歩いていく。目の前の道を、屋上の星空目指して。
<終>
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お題:「夕方の路地裏」で登場人物が「約束を破る」、「星座」という単語を使ったお話を考えて下さい。
なんか以前に書いたのがつづきものみたいになっちゃってたので、続かせてみました。お題が「夜の屋上」だったら非常にやりやすかったのですが、そうも行かず、屋上に届くところまで書けずにタイムオーバーです。まぁ二人のことですので無事に見れたでしょう。
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