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しゅっ、と衣擦れの音が部屋に響く。半裸姿で服を着込んでいる兵部はその手を止め、鏡の前に立って自分の首筋に手を当てた。
「あーあ、キスマークがついてるじゃないか」
「すみません……」
先に着替えを済ませた真木が兵部の着換えを持ちながら素直に謝る。どうやら自覚はあるようなので、許してやることにする。
「まぁいいけど。詰め襟で隠れるしね」
それに気持ちよかったし――と兵部はくすくす笑いながらシャツを手に取る。真木に背を向け鏡に向き直ると、真木の手がふいに兵部の背中に当たった。
「?」
真木は兵部の背中の弾痕に手を添えていた。そこを触られると何とも言えない、あまり建設的ではない気持ちになることを、真木も知っているはずだが。
「……痛々しいです」
「今更、何だよ。変な奴」
兵部からは見えないが、一般的に前から入った銃弾は後ろから出る時のほうが射出口が大きくなる。そこに柔らかい感触が触れた。真木が口付けしたのだ。
「まぁ、撃たれたのが俺なら、死んでいますが」
真木なりにフォローしているつもりなのか、少しだけ茶化すように自虐的な事を言う。
なんだか、複雑な気分だ。兵部は意図的に笑いながら振り返らずに真木に告げた。
「……バカ」
「何でしょう?」
「死ぬなんて軽々しく口にしないでもらいたいね。君は僕にとって大切な人間なんだよ?でなきゃそんな場所、触れることも許しはしない」
「……はい」
真木は頷くと、目を伏せたまま兵部に告げる。
「失礼なことをしました。忘れて下さい」
「うん」
それがいい、と兵部も思った。だから頷いた。
真木から受け取ったシャツを着込みながら、兵部は鏡ごしに真木を見る。
その顔はいつもと変わらないポーカーフェイスで、けれど兵部の目から見て落ち込んでいるのは確かだった。
「まーぎ」
「はい?」
兵部の咎める口調に、真木が少し怯んだ様子で兵部を見る。兵部はシャツのボタンを止めながら真木に振り向くと、その髪を引っ張って真木を引き寄せた。
「いたっ」
そのまま髪を辿るようにして真木の顔を引き寄せると唇にキスをした。そしてすぐに離れて真木に微笑みかける。
「本当に、バカ」
「はい」
真木も笑う。
その顔は何故か泣きたそうな顔に、兵部の目には見えた。
<終>
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お題:@yokoyama_kari: 『2RTされたら、「大切な人に」「着替え中」「笑いながら」、「バカ」と言う兵部京介を書(描)きます』
twitterの診断の結果です。ライトめラブということで。にしてもつくづく、自分は真木兵部の人間なんだなと思ってしまいましたとさ。
お返事