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hyoubutterのショートショートストーリー集
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スイカ救出大作戦 Watermelon

夏らしい?一編


■スイカ救出大作戦 Watermelon■


 パンドラのアジトの中には書斎がある。子供達が宇津見から勉強を教わるスペースたる図書室とは別に、廊下の突き当たりの一角に書架をもうけ、手前にテーブルと椅子を置いてパソコンを数台置いてある、娯楽用の書斎と言うべきか。そこの一番奥の席に仕事用のノートパソコンを持ち込んで作業していた真木だが、そろそろ部屋に戻って寝ようかと思った時に、兵部が現れた。
「真木」
「少佐?こんな時間まで何を」
 目を丸くする真木に、ずいっと兵部がにじり寄る。
「君こそ、もう休んでもいい時間だと思わない?」
 兵部は回転椅子を無理に自分のほうに向けさせると、真木の足の間に自分の足をねじ込んで、そのまま真木の唇に口付けてきた。
「ちょっと、今日は暑かったし、汗臭い…かもしれませんので!」
「構うもんか」
 真木が両手を突き出しながら兵部を拒否すると、その両手をとって兵部が手の甲に口付ける。先に右手に、次に左手に。
 実際にはもう兵部に抵抗する気などないのだが、場所が場所だ。皆が寝静まった頃とはいえこんな誰が来るかわからないようなところはやばい。
「明日は雨ですし、朝早くはなんの仕事も入ってないので、ちゃんと部屋で休みましょう。俺か少佐の部屋に移って……」
「あー!そうだった、明日は大雨だった!」
 素っ頓狂な声を上げたかと思うと、兵部は椅子に上げていた足を降ろして立ち直すと、真木に言った。
「これからクイーン達の小学校に行く」

 忍び込む、と言っても裏門の施錠はごく簡単な南京錠一個で、しかるべき道具があればいとも簡単に侵入は果たせるだろう。が、それよりも容易なのはやはり「飛び越えてしまう」ことであり、真木も兵部も最も簡単な手段をとって校庭へと忍び込んだ。
 区立六條院小学校――ザ・チルドレン3人の通う学園の敷地内は夜なお暗く、兵部はその後者の脇を我知ったといったふうに歩みを進めていく。
「少佐、どこに行くんですか」
「学校菜園」
「え?」
「だから、学校菜園。クイーンたちの植えたスイカがあるんだけどね、大雨が降るとここはすぐ冠水しちゃうんだ。もとは河川敷だからね、ここの学校菜園の敷地は。せっかく育てたスイカがダメになったらかわいそうだろう?」
 真木は兵部の後を歩きながら幾度か言葉を繰り返す。学校菜園。大雨。……つまり。
「クイーンたちの悲しむ顔が見たくないから、雨からスイカを守るために、今夜ここに忍び込んだんですか」
「そういうことかな」
 兵部にさらりと肯定されて、真木は殊更がっくりと項垂れた。大体それならなぜ最初から学校菜園のある場所にテレポートしないのか。こそ泥のような真似をして門を超えてきたのが馬鹿みたいだ。
 そうこうしている間に学校菜園にたどり着く。朝顔やひまわりにヘチマと、様々な植物が観賞用食用入り乱れて植栽されている。その中に、確かにスイカもあった。もう収穫まであと数日を待つだけという感じで、なるほど側溝の処理など手間暇かけていたことが伺える。
「で、どうするんですか」
「こうする」
 兵部がピンと右手の人差し指を立てると、園芸用の土の入った大袋が忽然と現れた。ホームセンターなどで購入できるあれだ。
「これで、スイカ畑全体を高い位置に上げる。すると水が入ってきても大丈夫だろう?」
「……力業ですね」
「そう言うなよ。心配しなくても僕が全部やるさ」
 兵部は己の言葉を守った。真木がただ見ている間に、スイカ畑が下からテレポートで土を盛られどんどん高い位置になっていく。
 一通り終わったと思った時に、急に兵部が真木のほうへと近づいてきた。
「?」
 無防備だった真木は懐の中に兵部が入り込むのを許してしまう。目を丸くしていると、兵部がにっこりと微笑んだ。
「さあ、これで全部終わった。あとは心起きなく続きができる」
「続き……」
 一拍遅れて真木の顔が真っ赤になる。兵部の言葉を正確に理解したからだ。
「嫌だとは言わないよね?」
「そ、それは、まあ……」
 しどろもどろになる真木を正面から見つめながら、兵部は真木の肩に手を置くと、今度は自分の寝室へとテレポートした。

                                    <終>

----------
 園芸はちょっと詳しくなくて・・・ちょっと調べたところだとスイカはどうもハウス栽培してるみたいなんですが、これは私の生息している地方だけかもしれません。六條院小学校はどうなのかわからなくて迷いましたが露地ものということにさせていただきました。
 

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