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hyoubutterのショートショートストーリー集
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紙の花 paper flower

蕾見男爵邸時代のお話。

■紙の花 paper flower■

 昔むかしあるところに、一人の少女と一人の少年がいました。
 少年と少女は血は繋がってませんでしたが、家族として一緒に暮らしていました。
「じゃあ私の許可なしに着換えたらおしおきよ、ご機嫌よう、京介」
「ちょっと――!」
 階下から子ども達の賑々しい声が聞こえてくる。
 宇津美は手元に綴られた書類を持っていたが、一時休止と心に決めて机の上に置くと、声のしたほうを目指す。
「何がご機嫌よう、だよぉ……不二子さんの意地悪……」
「どうしたい、京介……っと!」
 宇津美が遊戯室の扉を開けると、そこには愛らしい一人の少女が……いや、少年が座り込んでいた。
「宇津美さん!やだ、見られちゃったじゃないか」
 頬を赤く染めるのは羞恥心だけでなく頬紅を塗られているのもある。服はいつもの簡素な軍服と違い若い女中の派手目な服で、フリルのついた前掛けを下げて、髪には紙で作られた大きなリボンがあしらわれている。
「不二子さん、って言っていたね。それはもしかして……」
「……命令だって」
 どうやら、あの愛らしい小悪魔にしてやられたらしい。くすくすと笑いながら京介を慰める言葉を探す。
「まあその、なんだ……可愛らしいじゃないか」
「紅を差した美しい唇を吸いたいくらいだよ」
「えっ」
「ええっ?」
 京介が身構えて、宇津美がぽかんとする。今の言葉は自分の発したものではない。
「その着物の前をはだけて、羞恥に染まる君が見たい……なーんちゃって」
 宇津美の死角からひょこっと顔を出したのはこの事態の首謀者、不二子だった。
「不二子さん、ひどいよっ」
 京介が乱暴にごしごしと口紅を拭う。こういう仕草はどうやっても女性のようにはならないらしい。
「京介なんかそのままもみくちゃにされちゃえばいいのよっ」
「一体何があってこんな仕打ちをしたんだい?」
「なんとなく」
 その答えには宇津美も苦笑いした。
「なんとなくにしては、ずいぶん手間がかかっているね。頭の飾りは不二子君が作ったんだろう?」
「そうなのよ~、思いの外凝っちゃって」
「僕の意志は無視!?」
 京介が異議を唱えたが、不二子はあいかわらずのすまし顔だ。
「無視に決まってるじゃない」
「それはちょっと……」
 二人の偏りすぎた力関係に宇津美は苦笑するが、実の所宇津美も不二子にはしてやられてばかりなのだ。
 この屋敷の主人の娘というだけでない、天性のものだと思われる。
「楽しいからまたやろうかしら」
 ――女王様の顔をした無邪気な悪魔は、今日も、悪巧みをしているのでした。
                                     <終>

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題材[綴られた,悪魔,目指す,ご機嫌よう]童話風にやってみよう!

ほのぼのと言い聞かせる・・・

いつもありがとうございます!
 

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