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hyoubutter short story

hyoubutterのショートショートストーリー集
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サーバールーム server room

久しぶりにちょっとアダルトな真木兵部。

■サーバールーム server room■

 堅い床の上で目が覚めた。頭の上からカリカリと機械的な音が聞こえる。
 無機質なブラインドごしの早朝の光に照らされて、腕の中には兵部がいる。その心地よい重みを味わいながらぐるりと周りを見渡すと、白い箱がいくつも並んでいる。全てネットワークのサーバーだ。ここはパンドラ某支部のサーバー室だった。
 昨日の夜システムの調子が悪いと連絡があり、たまたま他の面子が出払っていたため真木がやってきた。ら、兵部も「暇だから」と追いかけてきた。
 それからようやく明け方になって一台のマシンが不安定になっているところまでつきとめたところで、兵部に押し倒された。文字通り、床の上に。
 その後のことは恥ずかしくてあまり思い出したくないが、破廉恥にもそのままいたしてしまって、行為のあと二人して数時間ほど眠ってしまったらしい。そして今に至る。かろうじて部屋のカギはかけたが、床の上でなど不本意だった。もっと時間も手間もたっぷりかけて、ゆっくりと愛しあいたいといつも思っているのに。
「ん……?」
 真木が逡巡していると、兵部が身じろぎした。そのまま長い睫が上へ押し上げられ、漆黒の瞳が真木を捕らえた。
「おはよう、真木」
 そう言うと兵部はにやりと笑う。どうやら記憶は鮮明で目覚めははっきりしているようだ。
「昨日はお楽しみだったね」
「冷やかしてる暇があるなら、早く服を着てください」
 今のままでは兵部がどこかからテレポートで運んできた毛布が一枚かかっているだけで、目のやり場に困る。そう思って告げた言葉だったが、兵部は頬を膨らませた。
「あ、そういうムードのない事言う?」
 そしてぴっ、と右手を挙げて人差し指を立てると、それにあわせて兵部が飲んでいたコーヒーのカップが持ち上がる。
「え?」
 兵部が指を下げるとその動きにあわせてコーヒーカップが下がる。その先には件のサーバーがあった。
「不安定なんて言わないでさ、いっそ壊しちゃえばいいんだよ」
「まさかっ!?」
 大あわてで炭素繊維を伸ばしてコーヒーカップを奪い取ろうとするが、カップはそのまま自然落下してサーバーの上に落ち、中身は景気よくサーバーマシンの上にぶちまけられた。
「ああああ……」
 絶句。何かを言葉にしようとするが、ぱくぱくと口が酸素を求める魚のように開閉するだけで、声にはならない。
 コトン、と音を立ててカップが絨毯敷きの床の上に落ちる音で、真木は我に返る。
「……悪ふざけが過ぎますよ」
「じゃあ」
 兵部はにっこりと笑うと、真木の背中に手を回す。
「僕に思い知らせてみろよ」
「――いいんですね?」
 怒った。流石に真木も怒っていた。なにか兵部にしてやらないと気が済まない。
 真木は兵部と身体を入れ替えて兵部の身体を床の上に押し倒すと、まるで噛み付くように、兵部の首筋にキスをした。

 思うまま兵部を蹂躙して、兵部は寝てこそいないものの意識が飛んでいるようだった。ぼんやりと天井を見ている。
「……何をやってるんだ、俺は」
 結局兵部の挑発に乗って、犯すかのように抱いた。泣いて許しを請われても是とは言わなかった。
 修行が足りない、と思うのはこんな時だ。もっと何か、やりようがあったはずなのに。
「僕が誘ったんだからいいじゃないか」
「しかし……――!?」
 慌てて視線を兵部に向けると、兵部は真木を見て苦笑いしていた。
「君の悪い所だね。自分のせいにしたがる」
「けど、浅はかでした。こんな……」
 喉から胸、そして脇の下へとかけてところどころに赤い徴をつけられた兵部の身体を見る。自分のエゴの結果だ。
「まぁそう言わないで。サーバーも無事だしさ」
「え?」
 目線をサーバーに向けると、どこにもコーヒーのかかった痕跡はない。ただ空になったカップが床に転がっているだけだ。
「!ヒュプノで騙したんですね?」
「騙されるほうが悪いんだよ。イイ思いしたんだし、いいじゃないか」
「~~っ」
 真木は顔を真っ赤にして再度怒るが、怒りはあまり持続しない。
「さ、早くマシンを直して船に帰ろう。ここの床はちょっと背中が痛い」
 涼しげな顔でそう言う兵部を、真木はじっとりとした恨みがましい目で見ずにはいられなかった。

                                    <終>
-----
yokoyama_kariさんは、「早朝の床の上」で登場人物が「騙される」、「ネットワーク」という単語を使ったお話を考えて下さい。

 久しぶりにちょっと大人向け。

読み終えましたらぽちりとひとつ。

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